DG

October 17, 2012

THE LISZT PROJECT : Pierre-Laurent Aimard

ピエール=ローラン・エマール 

THE LISZT PROJECT 

aimard

Disc.1
1. 悲しみのゴンドラⅠ S.200/1
2. ピアノソナタ (マティルデ・ヴェーゼンドンク夫人のアルバムのために) WWV85 (ワーグナー)
3. 灰色の雲 S.199 
4. ピアノソナタ Op.1 (ベルク)
5. 凶星! S.208
6. ピアノソナタ 第9番 "黒ミサ" Op.68 (スクリャービン)
7.-10. ピアノソナタ S.178

Disc.2
1. エステ荘の糸杉にⅠ (哀歌) S.163/2 
2. 哀歌 第4番 Sz.45/4 (バルトーク)
3. 小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ S.175/1 
4. 鳥人 (風変わりな小品集 第1集 より)(ストロッパ)
5. エステ荘の噴水 S.163/4
6. 水の戯れ (ラヴェル)
7. カオグロヒタキ (鳥のカタログ 第2巻)(メシアン)
8. オーベルマンの谷 S.160/6  

Deutsche Grammophon 477 9439
Recorded: 2011 

〔メモ〕
フランツ・リストとその影響が感じ取れる作曲家の作品を集めた非常に興味深いプログラムです。すべてライブ録音になります。エマールはメシアン夫人のイヴォンヌ・ロリオやマリア・クルチオなどに師事しました。ロリオはショパン直系/リスト直系であり、クルチオはレシェティツキ直系/ブゾーニ直系です。
Disc.1は「大いに異なるエレメントを融合した形式」とご本人が語るロ短調ソナタを中心とし、他の作曲家の単一楽章ソナタを配置したものです。ロ短調ソナタの演奏は響きを重視し、和声感を大事に扱っている印象です。知性派の彼らしく、ある意味分析的ですが、学究臭さのようなものはなく自然で美しい演奏でもあります。異なる要素を凝縮・融合していることと、和声感に重点が置かれるという点で、リスト、ベルク、スクリャービンのソナタは共通していると言えるのではないでしょうか。ご本人の説明よると「ベルクのソナタはワーグナーのトリスタン和音とシェーンベルクの4度和音を並置し、異なる世界を結合している」「スクリャービンは3全音を駆使して伝統的なものと革新的なものを合成している」(要約)とのことです。
Disc.2は直接的に同じテーマを並べて配置しています。リストの傑作エレジーと、「リストの和声的な影響が全体に感じられる」バルトークの哀歌。そして二つの水の作品ですがヨハネ福音書からの引用があるエステ荘と、「水の精にくすぐられて笑う川の神」という詩の引用がある水の戯れは、単なる現実上の水の描写ではなく「聖なる水しぶき」を表現した作品。聖フランチェスコの「伝説」も鳥人の「神話」も鳥という共通のテーマを通じて超越的なものを表現した作品。鳥のカタログとオーベルマンは「自然」と「時」が共通のテーマとのこと。
全体的に演奏は「研ぎ澄まされた知性」と「自然な美しさ」が感じられます。

過去にはブレンデルなど、リストの後世へ与えた影響の大きさを主張してくれたピアニストはいました。このエマールのプログラムもリスト受容史に大きな影響を与えるものでしょう。(技術的なことはもちろん)バロックから現代音楽まで何にでも対応する深い洞察力のあるエマールだからこそ実現できたプログラムだと思います。

フランツ・リスト→テオドール・リテール→イシドール・フィリップ→イヴォンヌ・ロリオ→ピエール=ローラン・エマール 
フランツ・リスト→テオドール・リテール→ロベルデ→マルセル・シャンピ→イヴォンヌ・ロリオ→ピエール=ローラン・エマール  
 

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June 13, 2012

LISZT: Klaviersonate u.a. / Maurizio Pollini

マウリツィオ・ポリーニ 

LISZT: Klaviersonate u.a. 

pollini liszt

1. ピアノソナタ S.178
2. 灰色の雲 S.199
3. 凶星! S.208 
4. 悲しみのゴンドラ I S.200i
5. R.W. - ヴェネツィア S.201

Deutsche Grammophon POCG-20060
Recorded: 1989  

〔メモ〕 
イタリアの名教師カルロ・ヴィドゥッソとイタリアの名匠アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリに師事した、現代を代表するピアニストのひとりであるポリーニのリスト集です。
まずピアノソナタの演奏は、感情のほとばしりやひらめきというものは無く、自分を律した厳めしい演奏です。この多重構造のソナタの構造美を重視した解釈であり、完成したモノはそびえ立つ巨大建造物のような壮観さ、重厚ささえあります。
そしてさらに注目は無調宣言以降の作品である後期作品群でしょう。例えばルイス・ケントナーは戦前からリストの後期の作品を取り上げ、その次の世代であるブレンデルも若い時から後期作品を取り上げていました(ちなみにソフロニツキー、リヒテルも1950年代から「灰色の雲」を演奏していた)。これら後期作品の普及に彼らが果たした役割は大きいです。そしてポリーニのこの演奏、録音がこれら後期作品が市民権を得ることになった決定打だと思います。ポリーニがレクチャーコンサートでこれら無調的作品を20世紀音楽の先駆的作品と定義付けたこともこれらの作品の受容に大きな影響を及ぼしたでしょう。そのレクチャーコンサートではリスト後期作品、シェーンベルク、シュトックハウゼンなどが演奏されたそうです。演奏は上記ソナタと同じように、甘みのない厳しい表情の演奏です。

余談ですが、僕は幸運にもポリーニのリサイタルで超絶技巧練習曲の第10番を聴くことができました。凄まじい演奏で全身が痺れたような衝撃を受けました。できればこの曲も録音して欲しいです。 

フランツ・リスト→カール・タウジヒ→ベニアミーノ・チェージ→ジュゼッペ・マルトゥッチ→ジョヴァンニ・アンフォッシ→アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ→マウリツィオ・ポリーニ 


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February 07, 2012

Liszt - Wilhelm Kempff

ヴィルヘルム・ケンプ 

Liszt: Années de pèlerinage: Italie (Auszüge) 

kempff liszt

  巡礼の年 第2年 イタリア S.161 より
1. 婚礼
2. 物思いに沈む人
3. サルヴァトール・ローザのカンツォネッタ
4. ペトラルカのソネット 第47番
5. ペトラルカのソネット 第104番
6. ペトラルカのソネット 第123番
7. ゴンドラを漕ぐ女 S.162/1
  二つの伝説 S.175
8. 小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ
9. 波を渡るパオラの聖フランチェスコ

Deutsche Grammophon 449 093-2
Recorded: 1974  

〔メモ〕 
ケンプ若き日のピアニストの理想像はダルベールとブゾーニでした。そしてケンプはリスト直系のピアニスト教師であるカール・ハインリヒ・バルトの弟子です。これらの事柄だけでもリストと縁深いピアニストだということがわかります。
彼は教会オルガニストの家系に生まれましたが、演奏行為を神聖なものと考えていたのでしょうか。ケンプが指導をしているときある生徒が指輪をして演奏をしていたら、ケンプは不快感を露わにし指輪を外すよう注意したそうです。ここでの演奏は純朴で敬虔な演奏解釈です。作為や飾り気の無い演奏で心に染入るようです。婚礼、ゴンドラを漕ぐ女や2つの伝説は特に素晴らしいと感じました。

ちなみに巡礼の年イタリアが全曲入ってるかと思えば、最終曲のダンテソナタが入っていません。ちょっと残念です。

フランツ・リスト→ハンス・フォン・ビューロー→カール・H・バルト→ヴィルヘルム・ケンプ 


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July 05, 2011

Liszt: Sonate h-moll /Krystian Zimerman

クリスティアン・ツィマーマン

Liszt: Sonate h-moll

zimerman

1. ピアノソナタ S.178
2. 灰色の雲 S.199
3. 夜 S.516a
4. 悲しみのゴンドラⅡ S.200/2
5. 葬送曲 S.173/7

Deutsche Grammophon 431 780-2
Recorded: 1990

〔メモ〕
ツィマーマンは現代のピアニストを代表する存在と言ってもいいのではないでしょうか。彼はいつも完成度の高い演奏をします。そんな彼が出したリストアルバムがこちらですが、ピアノソナタが特に素晴らしい!磨きぬかれた音、そして音楽の密度。どのように聴いても欠陥らしい欠陥がありません。「芸術に点数をつけるとはなにごとか!」とお叱りを頂きそうですが、仮に点数を付けるならば加点法で採点しても減点法で採点しても高得点を取れそうなそんな出来栄えです。完成度が高く最も整った演奏の一つと言えるでしょう。
悲しみのゴンドラにしても、このピアニストの最良の特質が光っています。大理石の質感を思わせる美しい演奏です。全体的に最高のリストアルバムの一つと言っていいようにおもいます。

ちなみに今年リスト生誕200年を記念して発売されたDGの34枚組ボックスにもこの録音は収録されています。

フランツ・リスト→ハンス・フォン・ビューロー→カール・H・バルト→アルトゥール・ルービンシュタイン→クリスティアン・ツィマーマン 


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May 05, 2011

CDリリース情報 05/05

関連記事:
CDリリース情報
アニバーサリーイヤーだからって!

・ユニバーサルのリストボックス
「今年はリストイヤーなのでリストボックスがいくつか出ましたが~」と何回書いたでしょうか。まだ情報がないので詳細はわかりませんが、今度はDG+Deccaのリストボックスがでます。The Liszt CollectionというタイトルでCD34枚組です
HMV: ザ・リスト・コレクション
タワレコ: ザ・リスト・コレクション

・ワイルド・アンド・クレイジー
こちらもDGの企画盤。2曲だけですがペトリはおそらく正規のCD化は初ではないでしょうか?もしかして上記リストボックスの抜粋盤なのかな?
HMV:ワイルド・アンド・クレイジー

・Liszt -The Piano Collection-
10枚組。EMIのリストボックス。
HMV: リスト -ザ・ピアノ・コレクション-

・ギイの詩的で宗教的な調べ
フランソワ=フレデリック・ギイの詩的で宗教的な調べ全集+ロ短調ソナタ。

・バレンボイムの3枚組
タワーレコードの企画盤。DG音源。バレンボイムのリスト3枚組。う~ん...バレンボイムの巡礼の年第1年全曲の録音が現在入手困難なので、それも入れてほしかったなぁ。
タワレコ:バレンボイムのリスト作品集

・ソニークラシカルのベスト盤
ソニークラシカルの国内盤ベスト。CD4枚組。
タワレコ:ソニーのリストベスト


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May 03, 2011

Années de Pèlerinage / LAZAR BERMAN

ラザール・ベルマン

Années de Pèlerinage

berman annees

Disc.1
1.-9. 巡礼の年 第1年 スイス S.160 (全曲)

Disc.2
1.-7. 巡礼の年 第2年 イタリア S.161 (全曲)
8.-10. 巡礼の年 第2年 補遺 ヴェネツィアとナポリ S.162 (全曲)

Disc.3
1.-7. 巡礼の年 第3年 S.163 (全曲)

Deutsche Grammophon 437 206-2
Recorded: 1977

〔メモ〕 
ピアニストとしての系譜を見るとベルマンはかなりのサラブレッドです。まず最初にベルマンに手ほどきをしたのは母ですが、その母はイザベラ・ヴェンゲーロワの弟子であり、レシェティツキ直系のピアニストとなります(レシェティツキ→ヴェンゲーロワ→母→ベルマン)。そしてその後ベルマンはサフシンスキーという人物に師事しますが、サフシンスキーも「ロシアの偉大な4大ピアノ教師」と言われるうちのひとりであるニコラーエフの弟子です(ニコラーエフ→サフシンスキー→ベルマン)。そして同じく「4大ピアノ教師」に含まれるゴリデンヴェイゼルがベルマンの最も重要な師であり、さらにゲンリヒ・ネイガウスにも指導を受けたこともあります。そしてさらにロシアピアノ界のカリスマ、いや、神と目されていた大ピアニストたちであるマリア・ユージナ(ニコラーエフ派)、ソフロニツキー(ニコラーエフ派)、リヒテル(ネイガウス派)にも短期間ですが指導を受けています。「私がソフロニツキーに師事したのは彼の死期が近づいた晩年である1958年から1960年だが、彼のレッスンを集中的に受けてはいない。彼は私にいかにして音楽の精神に近づくかを教えてくれた。」とベルマン本人は語っています。
さてブダペストリストコンクールで入賞した経歴のある彼ですが、やはり「ベルマンと言えばリスト」と言っても過言ではないでしょう。ここでの彼の演奏は打鍵が重く、荘厳な音楽を創り出しています。技術面も高度ですが、いたずらに指を走らせるようなことはしません。音楽は実直です。これはリスト録音の名盤として不動の地位を築いています。

ちなみに上記CDのブックレットにはハンフリー・サールによる巡礼の年の解説が載っています(英語)。

フランツ・リスト→アレクサンドル・ジロティ→アレクサンドル・ゴリデンヴェイゼル→ラザール・ベルマン
フランツ・リスト→ハンス・フォン・ビューロー→カール・H・バルト→ゲンリヒ・ネイガウス→ラザール・ベルマン
フランツ・リスト→カール・タウジヒ→アレクサンドル・ミハウォフスキ→ヴラディーミル・ソフロニツキー→ラザール・ベルマン 

関連記事:Лазарь Берман

アマゾン:別ジャケットの再販


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