後記
February 28, 2016
レスリー・ハワード: リスト ピアノ作品全集 -後記-
レスリー・ハワードの残した偉業であるリストのピアノ作品全集の紹介を締めたいと思います(いくつか過去記事の修正はこれからもしていきたいと思います)。
● データ
レーベル: ハイぺリオン
ディスク枚数: 98枚 + ボーナスディスク1枚
世界初録音: 300曲以上
受賞: アメリカ・リスト協会名誉勲章、ハンガリー政府文化勲章、フランツ・リスト名誉勲章(ハンガリー)、ディスク大賞(6回)、ギネス世界記録(一人の音楽家による最も巨大な録音プロジェクト)
● プロジェクトのはじまり
ハイペリオンというレーベルはヒューイット、アムラン、ハフなど実力派ピアニストを擁するレーベルです。ハワードはハイぺリオンレーベルの創設者である故テッド・ペリーに直々にスカウトされました。そしてハワードがリストのオリジナルワルツをリサイタルで演奏し、その同プログラムをスタジオ録音したことがこのプロジェクトの始まりのきっかけとなります。途中これは無理だと思うことがあったとご本人は回想されています。
● 感想
ブゾーニの弟子グイド・アゴスティに師事したハワードの演奏ですが、オーソドックスでスッキリしています。そしてリスト愛に溢れた演奏です。もの凄く早いペースで録音しなければいけなかったために、準備不足を感じる部分もありますが、全体的にはテクニカルで達者です。この物量を一人で演奏するという事は信じられないことです。さすがブゾーニ直系のピアニストと言えましょう。大半は教会内で録音されたらしく独特の残響が耳に心地良いです。
内容はリストのオリジナル作品、編曲作品、稿違いなどリストが残したおおよそ全てのピアノ作品の(演奏可能な)譜面を録音した膨大なプロジェクトです。ハワードが世界初録音したものも多く含まれます。このボックスセットは観賞用の価値だけでなく、資料的価値も高いものです。リストが好きだという方には大推薦いたします。
HMV : レスリー・ハワード リスト ピアノ作品全集
タワレコ : レスリー・ハワード リスト ピアノ作品全集
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February 14, 2013
世界の偉大なるピアノ音楽 -後記-
● レーベル: Melodiya/Bukok
メロディアレーベルの音源を使用して、韓国の会社が企画・制作したものです。「ロシア・ピアニズム」の著者である佐藤泰一さんによるとこのシリーズは教育用に作られたとのことです。よって韓国では一般販売はされていないとこのです。巻数は全90巻です。
● 盗用問題
このシリーズではやはりこの問題に触れないわけにはいかないでしょう。フランツ・リストの巻においてクズミンの演奏と表記されているほとんどの録音は、ミシェル・ダルベルトが日本のDenonレーベルへ録音したものを無断で使用しているものです。はっきりと盗用していると判明しているのはクズミンだけですが、他にも「このピアニストがあの曲を録音してるんだろうか?」という観点で見ると怪しいものがいくつもあります。佐藤泰一さんも「内容はなんとも理解しがたい」と言い、その真偽を疑っているようなことをその著書に書いています(しかし8割以上は本物です)。この問題が騒がれていないのは、おそらくこのシリーズが正規販売されてないものだからだと思います。盗用とは関係ありませんが、表記がいい加減だったりブックレットに解説が一切なかったりと、仕様もいい加減です。そうは言っても貴重な音源もありますので、ピアノ愛好家には注目のシリーズであることは事実です。
● 第88巻/第89巻
残念ながら第88巻と第89巻は発見することができなかったので、全巻紹介とはいきませんでした。ロシアのピアニストのディスコグラフィーを参照すると第89巻(DE 0209)はバルトークのミクロコスモスが収録されているらしく、演奏者はマリア・グリンベルグとマリア・ユージナだそうです。第88巻にいたっては内容すらわかりません。第87巻のラヴェルで、彼の代表曲といえる「夜のガスパール」や「水の戯れ」が収録されていないことから推測するに、第87巻はラヴェル集なのではと思います(が、ご存じの方がいらっしゃいましたらご教示ください)。
なにはともあれ「20世紀の偉大なるピアニストたち」シリーズやこの「世界の偉大なるピアノ音楽」シリーズのような大規模なピアノCDの企画は大歓迎です。どこかこういう企画をまたやってくれることを期待しています。
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September 25, 2012
20世紀の偉大なるピアニストたち -後記-
大したことは書いてませんが、完走したということで達成感があります(笑)。僕はちょうどCDを集め始めた頃にこのCDセットと出会い、ピアノ鑑賞の面白さにのめり込んでいきました。当時それほどリストに興味が無かった僕がリスト好きに変わったのも、このセットによる影響も大きいです。このような企画を実現してくれた、制作者たちに感謝したいと思います。
● データ
レーベル: フィリップス
スポンサー: スタインウェイ
発売: 1999年
巻数: 100巻 (CD200枚)
ピアニスト数: 72人
プロデューサー: トム・ディーコン
参加レーベル: Philips, DG, Decca, EMI, Sony Classical, BMG(RCA, Melodiya含む), Warner Music他
備考: このセットのドイツ版ではクララ・ハスキルのスカルラッティのソナタ集(Westminster録音)が収録された補巻があるそうです。
● 個人的に思うこと
ピアノファンたちが集まるフォーラムなどを覗いてみると、このセットに対して「○○が含まれてない。なんでだ!」とか、逆に「なんで××が含まれているんだ!」という文句も多くみられます。全ピアノファンを満足させるチョイスは不可能なので、それは仕方ないことだというのも理解できるのですが、できればラザール・ベルマンを含めて欲しかったです。過去のことをグチグチ言っても始まらないのですが、これだけは言いたい(笑)。もしベルマンが含まれていたら、おそらく1963年録音の超絶技巧練習曲の録音が含まれると思います。この超絶の音源は日本以外ではCDでリリースされたことありません。そういう意味でも、もしベルマンが含まれていたら意義深いことになったと思います。
● ピアニストの系譜
記事を読んでいただけると、お気づきになるかと思いますが、師弟関係を遡っていけばリストにつきあたるピアニストに限り「フランツ・リスト→~」と記述しました。72人のうち45人のピアニストが師弟関係を遡っていくとリストに辿りつきます。リストのピアノ教師としての影響力の大きさがうかがい知れます。この45人というのはもちろん「僕が知る限り」ですので、「少なくとも45人」と考えていただいてよいと思います。他には19世紀の偉大なピアノ教師だったレシェティツキの系譜に属するピアニストも多いですね。
● 今後
今後は記事を書き直したり、第1巻→第2巻→第3巻~と記事をリンクで繋げていきたいと思います。
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