阪田知樹さんリストコンクール優勝!愛の夢 第3番 S.541/3

October 01, 2016

ピアノソナタ S.178



ピアノソナタ S.178 / Sonate S.178 

〔楽曲メモ〕 
リストのピアノ作品の最高峰であるピアノソナタです。「ロ短調ソナタ」とも呼ばれます。リストにとって唯一の正式なピアノソナタです。1851年から1853年にかけて作られたものです。シューマンが彼の傑作である「幻想曲 Op.17」をリストへ献呈した返礼として、リストはこの大ソナタをシューマンへ献呈しました。シューマンはこの曲に熱中することはなかったらしく、時の批評家ハンスリックはこの曲を酷評しましたが、ワーグナーは「あらゆる概念を超越してこのソナタは美しく、偉大で、愛らしく、深遠で、気高い - まるであなたのように」という最大の賛辞を贈っています。ワーグナーはこの曲をリスト自身の音楽的肖像だと考えていたようです。1857年1月22日にリストの弟子で偉大なピアニストであるハンス・フォン・ビューローが初演し成功を収めました。過去にはリストの管弦楽曲の最高峰「ファウスト交響曲 S.108」に倣い「ファウストソナタ」というあだ名を付けられたこともあり、アレグロ・エネルジーコ部をファウスト、アンダンテ・ソステヌート部をグレートヒェン、フガート部をメフィストフェレスと解釈する人もいました。

〔名演〕 
この曲はピアノ作品の傑作ということで多くの名ピアニストたちが録音しています。僕がとりあえずみなさんに聴いていただきたいのはアラウ(Decca)の1970年の録音になります(上の動画)。ワーグナーが指摘したようにこの曲はいろいろな要素を含みます。このアラウの名演が高貴さ愛らしさ深さ美しさなどを総合的に表現していると僕は感じます。
他に好きな演奏としてはマルタ・アルゲリッチ(DG)のものがあります。これは彼女が何かに取り憑かれたかのような演奏であり、超常現象のような超越的名演です。
他にはコルトー、ホロヴィッツ、ベルマン、フィオレンティーノ、ブレンデル、ボレット、シフラ、ギレリス、リヒテル、ソフロニツキー、ワッツ、ツィマーマン、エマールなどいろいろな名演があり、挙げていけばキリがありません。これらの違いを聴くことも楽しみのひとつです。


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ミッチ at 21:56│Comments(4)TrackBack(0) 楽曲紹介 



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この記事へのコメント

1. Posted by Yoshimi   October 04, 2016 21:45
こんばんは。
アラウのロ短調ソナタは、再録音もありますが、高齢のためか少し枯れた(乾いた)ような印象がしたような記憶がありますので、この旧録音の方がいいですね。

アルゲリッチの演奏はほとんど聴かないのですが(何度か聴いて全く合わなかったので)、「何かに取り憑かれた」「超常現象のような」というのは想像できます。
演奏解釈という枠を超えて天性のテンペラメントで弾いているように思いますが、時として神がかりな雰囲気が漂うことがありますね。
2. Posted by ミッチ   October 05, 2016 22:24
こんばんは!

これは個人的な感想なんですがアラウの85年の録音は有機的一体感が少し欠如しているように感じました。70年の録音は万人にアピールできるような魅力があると思うのですが、85年の録音は特別な角度から演奏を評価しないといけないような気がして、あまり万人向けな感じがしません。もちろん85年盤にあって、70年盤に無い魅力というものもあるかとは思いますが。

アルゲリッチの録音はおっしゃる通りテンペラメンタルの演奏で、ホロヴィッツもそうだと思いますが「好きな人は大好き、嫌いな人は大嫌い」という類の演奏だと思います。
3. Posted by klavier   November 09, 2016 22:49
こんばんは。
さきほどようやく、このアラウの演奏をヘッドホンでじっくり聴きましたが、私もすごく彼の演奏が好きになりました。とても良いです!ミッチさんがおっしゃるように、リストのこの曲のあらゆる魅力を表現しているように思います。エレガントで深みもある、素晴らしい演奏だと感じました。


この曲をリストがシューマンに献呈した時、シューマンにはこの曲はどういう印象だったのでしょうね?当時の批評家も、この曲を酷評していたとは。
そういう私も、この曲を最初に聴いた若い時は、実はあまりに壮大なためによく分からず、すぐには好きにはなれませんでした。ですがだんだんと聴いているうちに惹かれ始め、今では大好きになりました。

しかしワーグナーは、当時からこの曲の素晴らしさを解っていて、リストの音楽的肖像だと考えていたとは、さすがですね!ワーグナーとリストは、コジマの事で一時確執があったものの、才能豊かな者同士、お互いの音楽の良き理解者であったのですね。でもこの曲の初演がビューローだったというのもまた、面白い縁を感じます。

素晴らしいアラウの演奏と、興味深い記事をどうもありがとうございます!
4. Posted by ミッチ   November 10, 2016 00:28
こんばんは!

ハンスリックがロ短調ソナタを酷評したのは事実なんですが、当時は保守派ブラームス&ハンスリック陣営と革新派ワーグナー&リスト陣営に分かれて対立していたという背景がありますので、ハンスリックがどこまで本気でロ短調ソナタを「支離滅裂」と評したのかは疑問が残ります。つまりそれは冷静で客観的な批評だったのか気になりますし、感情的にならなかったのでしょうか。

とは言ってもやはり奥深い曲なので当時の人々がこの曲を理解しがたいと感じても不思議ではないですね。

シューマンのロ短調ソナタに対する反応ですが、僕はあまりくわしくないです。シューマンがその曲を喜んだということは僕は読んだことはないので、あまり良い反応ではなかったのではないかと思います。シューマンの精神病の病状が進んでいる時期だったので作品をちゃんと聞くことができたのかどうかもわかりません。

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