September 13, 2016
ブレンデルは語る -リストについて-
ブレンデルのリストについてのコメントをご紹介します。
"ロマン派におけるピアノの天子であり、宗教的ピアノ作品の創始者でもある。音楽的巡礼の編者であり、トランスクリプションやパラフレーズの飽くなき熟達者でもある。近代音楽の急進的先駆者であり、セザール・フランク、スクリャービン、ドビュッシー、ラヴェル、メシアン、リゲティの音楽的源泉でもある。
リストのピアノ音楽を深く知れば、彼が至高のピアノ芸術家であることが実感できるであろう。これは彼のピアニスティックな超絶的技術の話をしているのではなく、表現力の到達点のことを言っているのだ。シューマンが述べたように「表現の天才」であるリストのみが、ピアノが表現しうるどこまでも続く水平に光を照らすことができるのだ。ここでペダルが非常に重要なモノとなることは言うまでもない。
ロ短調ソナタ、巡礼の年、"泣き、嘆き、憂い、おののき"変奏曲、悲しみのゴンドラ、そして上質ないくつかのエチュードなどを例に出すに留めるが、リストの傑出したピアノ作品群はショパンやシューマンらの代表作と比肩しうると私は考えている。ロ短調ソナタについてはそのオリジナリティ、大胆さ、表現力の幅により、ベートーヴェンとシューベルト以降に書かれたこの類の作品全てを凌駕しているのだ。
今日リストの作品は過度なスピードで演奏されている。それ自体を目的とした技巧的な豪華絢爛さはリストにふさわしくない。また一見耳障りの良いものや、なよなよとしたものは避けなければならない。ヴィルヘルム・ケンプによる1950年録音の伝説第一番「小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ」が極上のクオリティによる詩的なリスト演奏を体現しているのだ。"
外部リンク: the guardian / An A-Z of the piano: Alfred Brendel's notes from the concert hall
〔メモ〕
この文章からブレンデルのリストへの敬愛がとても強く感じられます。そしてリストに対する誤解を少しでも解こうという彼の気持ちがのぞけるような気がします。ブレンデルが最も多く取り上げた作曲家はモーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトそしてリストです。リストはワーグナーと共に新ドイツ楽派と言われています。ブレンデルはリストをドイツ・オーストリア圏の作曲家として扱っているような印象を受けます。「ハンガリー出身のロマン派の作曲家」という見方ではなく「ベートーヴェンやシューベルトの精神を受け継ぐ作曲家」という観点を持っているのではないでしょうか。観点の違いによりリストの音楽への接し方が変わってくると思います。
関連記事: シェーンベルク「フランツ・リスト その活動と本質」
関連記事: バルトークは語る -リストの先進性-
関連記事: ラヴェルは語る -リスト作品の欠陥-
関連記事: ブゾーニは語る -リストという木-
関連記事: アンスネスは語る -リスト録音-
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"ロマン派におけるピアノの天子であり、宗教的ピアノ作品の創始者でもある。音楽的巡礼の編者であり、トランスクリプションやパラフレーズの飽くなき熟達者でもある。近代音楽の急進的先駆者であり、セザール・フランク、スクリャービン、ドビュッシー、ラヴェル、メシアン、リゲティの音楽的源泉でもある。
リストのピアノ音楽を深く知れば、彼が至高のピアノ芸術家であることが実感できるであろう。これは彼のピアニスティックな超絶的技術の話をしているのではなく、表現力の到達点のことを言っているのだ。シューマンが述べたように「表現の天才」であるリストのみが、ピアノが表現しうるどこまでも続く水平に光を照らすことができるのだ。ここでペダルが非常に重要なモノとなることは言うまでもない。
ロ短調ソナタ、巡礼の年、"泣き、嘆き、憂い、おののき"変奏曲、悲しみのゴンドラ、そして上質ないくつかのエチュードなどを例に出すに留めるが、リストの傑出したピアノ作品群はショパンやシューマンらの代表作と比肩しうると私は考えている。ロ短調ソナタについてはそのオリジナリティ、大胆さ、表現力の幅により、ベートーヴェンとシューベルト以降に書かれたこの類の作品全てを凌駕しているのだ。
今日リストの作品は過度なスピードで演奏されている。それ自体を目的とした技巧的な豪華絢爛さはリストにふさわしくない。また一見耳障りの良いものや、なよなよとしたものは避けなければならない。ヴィルヘルム・ケンプによる1950年録音の伝説第一番「小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ」が極上のクオリティによる詩的なリスト演奏を体現しているのだ。"
外部リンク: the guardian / An A-Z of the piano: Alfred Brendel's notes from the concert hall
〔メモ〕
この文章からブレンデルのリストへの敬愛がとても強く感じられます。そしてリストに対する誤解を少しでも解こうという彼の気持ちがのぞけるような気がします。ブレンデルが最も多く取り上げた作曲家はモーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトそしてリストです。リストはワーグナーと共に新ドイツ楽派と言われています。ブレンデルはリストをドイツ・オーストリア圏の作曲家として扱っているような印象を受けます。「ハンガリー出身のロマン派の作曲家」という見方ではなく「ベートーヴェンやシューベルトの精神を受け継ぐ作曲家」という観点を持っているのではないでしょうか。観点の違いによりリストの音楽への接し方が変わってくると思います。
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この記事へのコメント
1. Posted by klavier September 14, 2016 22:23
ミッチさん、こんばんは。
今回はブレンデルのコメントの記事をありがとうございます。彼のリスト作品についての造詣の深さ、またその作品が後世の作曲家に与えた影響の事など、本当にミッチさんが言われるように、ブレンデルのリストへの大きな敬愛が感じられますね。
私自身、リストの事を知れば知るほど、その素晴らしさや奥深さに、感動を重ねるばかりです。
ミッチさんがこうしてリストに関する記事を訳して伝え続けて下さる事にも、とても感謝です!
今回はブレンデルのコメントの記事をありがとうございます。彼のリスト作品についての造詣の深さ、またその作品が後世の作曲家に与えた影響の事など、本当にミッチさんが言われるように、ブレンデルのリストへの大きな敬愛が感じられますね。
私自身、リストの事を知れば知るほど、その素晴らしさや奥深さに、感動を重ねるばかりです。
ミッチさんがこうしてリストに関する記事を訳して伝え続けて下さる事にも、とても感謝です!
2. Posted by ミッチ September 16, 2016 01:05
klavierさん、こんばんは!
ブレンデルが若かった頃はリストへの逆風がまだ強かったと思いますが、彼がここまでリストを支持してくれるのは、一リストファンとしては本当にありがたいです。彼はケンプとコルトーのリスト録音を非常に高く評価してますが、素晴らしい録音に触れることによってリストの真価を見出せたのかもしれませんね。
ブレンデルが若かった頃はリストへの逆風がまだ強かったと思いますが、彼がここまでリストを支持してくれるのは、一リストファンとしては本当にありがたいです。彼はケンプとコルトーのリスト録音を非常に高く評価してますが、素晴らしい録音に触れることによってリストの真価を見出せたのかもしれませんね。