LISZT the CollectionJOHN OGDON: Legendary British Virtuoso

August 18, 2013

レスリー・ハワード: リスト ピアノ作品全集 Disc.95

Leslie Howard
The Complete Liszt Piano Music
ピアノと管弦楽のための作品 1 

Disc.95 
1.-4. ピアノ協奏曲 第1番 S.124* 
5.-7. ベートーヴェンの《アテネの廃墟》の動機による幻想曲 S.122*
8.-14. 死の舞踏 - 《怒りの日》によるパラフレーズ 〔最終稿〕 S.126ii*
15.-16. ベルリオーズの《レリオ》の主題による交響的大幻想曲 〔修正:ハワード〕 S.120* 

*カール・アントン・リッケンバッヒャー指揮/ブダペスト交響楽団  

Hyperion CDA67401/2
Recorded: 1997/1998 

〔メモ〕
〔1〕~〔4〕リストの代表的なピアノ協奏曲。数回の改訂を経て完成にいたるが、その最終稿以前の原稿には「交響的協奏曲」と書き入れている。楽章分けはされていないが4部に分けて考えることができる。ヘンリー・リトルフへ献呈されているが、リトルフも4つの「交響的協奏曲」を書いていて、それら作品からの影響も考えられる。主題変容という技法を用い全体の統一感を高めている。初演はリスト独奏、ベルリオーズの指揮で行われた。 〔5〕~〔7〕ベートーヴェンの劇付随音楽「アテネの廃墟」を素材として用いた作品。当ピアノ協奏稿のほかにピアノ独奏稿や2台ピアノ稿もある。それら全てニコライ・ルビンシテインへ献呈された。ピアノ独奏稿「《アテネの廃墟》の動機による幻想曲 S.389」やその他関連作品はDisc.49に、「《アテネの廃墟》の動機による幻想曲〔第1稿〕S.388b」はDisc.69に収録。 〔8〕~〔14〕こちらもリストの代表的なピアノ協奏曲。単旋律聖歌「怒りの日」を主題とする変奏曲形式の作品。ピアノ独奏稿はDisc.17に、「死の舞踏〔《深き淵より》編入稿〕S.126i」はDisc.98に収録。 〔15〕~〔16〕ベルリオーズが自身の幻想交響曲への続編として書いた叙情的モノドラマ「レリオ、あるいは生への復帰」の2つの主題を使用してリストが書いた幻想曲。この作品の自筆譜は行方不明だったが、近年フランスのとあるオークションで出品された。ハワードはその自筆譜をもとに修正をして録音している。




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この記事へのコメント

1. Posted by yoshimi   August 26, 2013 09:20
こんにちは。
最後の「ベルリオーズの《レリオ》...」だけは聴いたことがありませんが、《死の舞踏》はリスト作品のなかでは最も好きな曲の一つです。
絵に描かれた『怒りの日』の様子が浮かんでくるような詩的で絵画的なところが美しいです。

サン=サーンスの「Dance macabre」の編曲版もありますが、日本語訳になると曲名が同じで紛らわしいです。
《死の舞踏》といえば、私にはリストオリジナルの方(ピアノ&オケ版)がすぐに思い浮かびますが、Youtubeのリシッツァの演奏でピアノソロの方が話題になっていましたね。

《死の舞踏》のブゾーニ改訂版の方を弾いている人も時々いますね。
楽譜を照合したことはないのですが、耳で聴いた限りでは、一番わかりやすい違いは、ラストのピアノソロが、リストの最終稿では下行スケール、ブゾーニ改訂版は上行スケール...というところでしょうか。
2. Posted by ミッチ   August 26, 2013 20:08
こんにちは!

僕もリストのピアノ協奏作品では「第2番」「死の舞踏」「アテネの廃墟幻想曲」などが好きです。

リシッツァの「死の舞踏」独奏稿はNaxosのスタジオ録音とDeccaの映像がDVDで出ていますね。どちらも買えていないのですが、興味あります。終盤を変えているみたいで、良いアレンジだと思います。

「死の舞踏」の版に関しては僕も深い知識があるわけではなく、誤った認識を持っているかもしれないので話半分で聞いていただきたいのですが、リストのオリジナル版では終盤グリッサンド以後はピアノパートが何も書かれてなく、即興演奏をしてよいそうです。それでyoshimiさんがおっしゃっているオクターブのパッセージ部分は版によって違うのですが、ブゾーニ版とダルベール版は上行ですが、多くのピアニストが一般的に演奏しているものは下行ですね。改めてブレンデル(Philips)とシフラ(EMI)の演奏も聴いてみたのですが、どちらも上行でした(しかしブゾーニ版でもダルベール版でもないと思う)。

ブゾーニ改訂版とリスト版の違いは追加フレーズかと思います。ミケランジェリはブゾーニ版を演奏しているようですが
https://www.youtube.com/watch?v=7roz8yORa3w
ここで3:33~の「ラ・シ♭ーラ・ドーラ・レーラ・ミ~」みたいなピアノのフレーズと
https://www.youtube.com/watch?v=tOarLZFc9Fo
この5:10~の管楽器による「ミミミファファファファファ~」みたいなフレーズです(わかりづらい(笑))。
ミケランジェリ、ギンズブルグ、ペトリ(ブゾーニの弟子)はブゾーニ版を演奏しています。
3. Posted by yoshimi   August 27, 2013 00:49
こんばんは。
詳しい比較解説をどうもありがとうございました。
お忙しい時に音源までチェックしていただいて、お手間をおかけしまして恐縮です。

IMSLPでリスト初稿版の手書譜を探して見てみましたが、確かにグリッサンド以降は何も書かれていませんでした。
上行しているからといって、ブゾーニ(でもダルベール)版とは限らないということは、他のフレーズと合わせて判断しないといけないということですね。

パーチェのライブ音源(若い頃のコンクールではたぶんリスト版、後年はブゾーニ版)を昔から聴いているので、ミケランジェリの音源と聞き比べて見ましたが、「ラ・シ♭ーラ・ドーラ・レーラ・ミ~」のフレーズは、リスト版では弾いていなかったです。
それに、管楽器のフレーズが追加されているのもわかりました。(続くオケのパー
トにも若干違いがあるような..)。

もともとピアニスティックなリスト版なので、ブゾーニは大幅に改定したわけではなく、つなぎの部分など、細かいところに手を入れたようですね..。
いつかブゾーニ版の楽譜を見てみたいですね。
4. Posted by ミッチ   August 27, 2013 19:43
こんばんは!

僕もすごく興味のある話題だったので語りに熱が入ってしまいました(笑)

それでですね、いろいろネット上で調べてみたんですけど、もしかしたら僕が上で書いたことや、ブログ記事でもミケランジェリのCD紹介で「ブゾーニ版を演奏している」と書いたことが全て間違いだったかもしれません。どういうことかというと、「死の舞踏最終稿のブゾーニ版」というのは存在しないかもしれません。(死の舞踏の初稿のブゾーニ版はあります)

そもそもなぜ「ラシ♭ーラドー~」の追加フレーズがあるものを「ブゾーニ版」と判断したかを説明させていただきますと
1.ギンズブルグのCDにそのようにクレジットされていたから。Arlecchinoレーベルが出していたCDに「ブゾーニ編」と書いてありました。(ただこのレーベルは他社の音源を無許可でリリースする海賊版レーベルなので、今考えれば表記があやしくてもおかしくない)
2.ペトリが演奏していたから。ブゾーニの弟子ペトリはリスト作品を演奏する時ブゾーニ改訂版を演奏することが多かったです(「ファウストワルツ」「パガニーニエチュード5番」など)。

これらの理由から、それが「ブゾーニ版なんだろうな」と思っていたのですが。ネット上でジロティ版を聴いてみると、これが僕が以前ブゾーニ版だと思っていたものと全く同じものでした。
「ジロティ版」が存在するのは確実です。ブレンデルはそのエッセイで死の舞踏ジロティ版について言及していますし、ハワードはジロティ版に対し批判めいたことを言っています。
しかしネット上で死の舞踏ブゾーニ版を調べてみても、初稿の方しか検索にひっかかりません。

これらを総合的に考えてみると「死の舞踏最終稿のブゾーニ版」は存在しないかもしれません。
5. Posted by yoshimi   August 28, 2013 02:35
こんばんは。
いろいろ調べていただいて、どうもありがとうございました。
私もとても興味がある話題なので、ちょっと調べてみました。
実は、最終稿のブゾーニ改訂版については情報を見たことがなかったので、今の今まで、「ブゾーニ版」=初稿を元に改訂したバージョンのことを指しているのだと思い込んでいました。

初稿の初出版が1919年(Breitkopf & Hartel,De Profundis version(ブゾーニ改訂) )らしいですから、実質的には初稿楽譜=ブゾーニの改訂版楽譜、という扱いのように思いました。
(リストの自筆譜を元に、ピアニストが弾いているのでない限り)

私もブゾーニの作品番号順作品リスト(IMSLP/wiki)を見てみましたが、作品番号が付いているのは、初稿改訂版だけでした。
おっしゃる通り、最終稿のブゾーニ改訂版は存在しない可能性が高いようです。(作品番号の付いていないものがあれば別でしょうが)
(字数制限のため、別コメントに続きます)
6. Posted by yoshimi   August 28, 2013 02:38
ジロティ版の存在は全然知りませんでした。
ネット上にいくつか楽譜情報がありますから、確かに存在していますね。
1)ブレンデル:”Siloti’s edition of Totentanz in the Eulenburg pocketscores”。
わざわざ、ブゾーニ版ではなく、ジロティ版に言及しているくらいですから、ブレンデルが弾いているのは、ジロティ版なのかもしれません。

2)米メリーランド大学が作成・公開中のジロティ全集:Liszt -- Totentanz (DanseMacabre) -- Neue Ausgabe von A. Siloti, 1930?

3)オンラインショップ;Totentanz. Paraphrase uber ?Dies irae?.Leipzig,Siegel. Neue Ausg.v.Siloti. Ebd.
http://gutenberg.spiegel.de/buch/4343/14

私も、ジロティ版(らしき)演奏と、ハワードのブゾーニ版演奏をYoutubeで聴いてみました。
おっしゃる通り、今まで私がブゾーニ版だったと思っていたのは、ジロティ版(らしきバージョン)でした。
ラストにいたっては、上行するのはジロティ版で、ブゾーニ版の方は、最終稿ともジロティ版とも全然違っていますね。

正確に確認するには、ジロティ版の楽譜か、ハワードの録音と解説があれば良いのですが、今まで教えていただいた情報でも、かなり確定的なように思います。
ほんとに、この曲の楽譜のバージョン違いはややこしいです。ようやく謎がほぼ解けたようで、すっきりしました。
7. Posted by yoshimi   August 28, 2013 13:01
こんにちは。
度々すみません。大したことではないのですが、コメントに書いた楽譜情報が間違っていたので、訂正します。

(誤) 3)オンラインショップ
(正) 3)ドイツの電子図書館プロジェクト「Project Gutenberg-DE」
http://gutenberg.spiegel.de/buch/4343/14

同プロジェクトに収録されている「Marie Lipsius: Musikalische Studienkopfe-Romantiker」という文献に、以下の記載があります。

1)12. Symph.-Dicht., Totentanz (Siloti). Kl.Part. Ausg. Leipzig,Eulenburg.
2)Totentanz. Paraphrase uber ?Dies irae?.Leipzig,Siegel. Neue Ausg.v.Siloti. Ebd.

1)は、ブレンデルが言及しているEulenburg版のことではないかと思います。
8. Posted by ミッチ   August 28, 2013 16:34
おお、いろいろお調べくださってありがとうございます!とても有益な情報です!

僕の上の書き込みに対する補足ですが、上で申し上げたようにリスト本人は終盤ピアノパートは書いていないのですが、終盤のダブルオクターブのパッセージは(上行か下行かは置いといて)リスト本人がそのように演奏することがあったのでそのように演奏するのが伝統的慣習となったようです。なので(上行、下行の違いはあれど)どの版も共通してダブルオクターブのパッセージを演奏するようになっているようです。

死の舞踏の初期稿もややこしいのですが(笑)、ブゾーニ校訂版のものはハワードは「デ・プロフンディス(深き淵より)・バージョン」と呼んでいます。これ「第1稿」とか「第2稿」と呼べればややこしくないのですが、研究家によっては「デ・プロ~バージョン」を第2稿だと主張したり初稿だと言ったり、まだ第何稿なのかはっきり(僕には)わかってません。(ハワードは第1稿だと思っているみたいです)
このバージョンと最終稿との最大の違いは途中で聖歌「深き淵より」の旋律が挿入されることです。
https://www.youtube.com/watch?v=QRTv9kMO2XY
この動画でいうと9:24~です。またこのバージョンは冒頭のピアノも無いのでそこもわかりやすい違いですね。
このバージョンの自筆譜は個人所有されていて、その所有者が公開することを拒否しているらしく、ハワードは仕方なくブゾーニ校訂版を使用し録音しました。ここで問題なのはブゾーニは(編曲ではなく)校訂作業でも編曲に近いことをしてしまうことがあったので、このブゾーニ版がリスト自身の自筆譜にどれだけ忠実かわからないことです。

ちなみにレイモンド・レーヴェンタールは自身が編曲した「死の舞踏」を演奏していますが、聴いてみると「デ・プロフンディス・バージョン」を基に編曲しているようです。
https://www.youtube.com/watch?v=lCfK_BBfgtU
https://www.youtube.com/watch?v=qrAvIeWmKD8
9. Posted by yoshimi   August 29, 2013 00:03
こんばんは。
「深き淵より」バージョンにも、リスト自筆譜とブゾーニ改訂版があるんですね。
私は、こちらの方もてっきり、ブゾーニ改訂版しか出ていないのだと思っていました。
ブゾーニ版は今まで聴いたことが無かったのですが、聴いてみると最終稿ともジロティ版とも随分違うので、すぐにわかりました。
リスト自筆譜が非公開状態なのであれば、ブゾーニ改訂版が「深き淵より」版として演奏されるしかないですね。

おかげさまで、今まで参考にしていたウェブ上の情報(Wikipediaなど)が、断片的なのがよくわかりました。
レーヴェンタール版まであると、さらに版の違いを聞き分けるのがややこしくなりそうです。
《死の舞踏》のバージョン情報について、一連の情報を把握している人はほとんどいないでしょうね。
いろいろ教えていただいて、ありがとうございました。とても勉強になりました。
勝手に思い込んでいたことが多かったのがわかりましたし、謎解きみたいで面白かったです。

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