FERENC LISZTレスリー・ハワード: リスト ピアノ作品全集 Disc.90

April 17, 2013

リストのややこしい事1 -アヴェ・マリア編-

フランツ・リストの作品(またその人生も)はややこしい事が多いです。リストのややこしい事をまとめて、少しでもわかりやすいようにしてみようと思います。

まず第1弾はアヴェ・マリアです。アヴェ・マリアと言えばシューベルトの歌曲やバッハの曲をグノーが編曲した歌曲が有名ですが、リストもいくつかアヴェ・マリアという曲を書いています。ここではピアノ独奏曲をまとめてみたいと思います。

● S.173/2 詩的で宗教的な調べ 第2番 アヴェ・マリア 
リストの代表的な曲集の一つと言える「詩的で宗教的な調べ」ですが、その第2曲がアヴェ・マリアというタイトルです。もともとは合唱曲ですが、それをピアノ独奏編曲したものです。チッコリーニの名演が心に響きます。
区別できるように呼称するなら「詩的で宗教的な調べのアヴェ・マリア」か「変ロ長調のアヴェ・マリア」でしょうか。

● S.182 アヴェ・マリア - ローマの鐘 
オリジナルのピアノ独奏曲。レーベルトとシュタルクによるピアノ教本「大ピアノ教程」のために作曲されたものです。あまり演奏される機会はありませんが、リヒテルやハフの録音があります。
区別するための呼称は「ローマの鐘」(これは副題です)か「ホ長調のアヴェ・マリア」ではないでしょうか。

● S.183/2 アルカデルトのアヴェ・マリア 
アルカデルトの曲を編曲したもの・・・と思いきや、この原曲は別人がアルカデルトの作風を模倣してでっち上げたもの。それをリストがピアノ独奏編曲したもの。
区別するための呼称は「アルカデルトのアヴェ・マリア」か「ヘ長調のアヴェ・マリア」とかでしょうか。

● S.504 アヴェ・マリア (Ⅱ) 
フランツ・リストによるモテット「アヴェ・マリアⅡ S.38」をピアノ独奏曲へ編曲したもの。第1稿と第2稿のふたつのバージョンがあり、第1稿はニ長調、第2稿は変ニ長調です。
区別するための呼称は「アヴェ・マリアⅡ」ですかね(Ⅱは「に」でも「ツー」でも「ツヴァイ」でもご自由に)。

● S.545 アヴェ・マリア (Ⅳ) 
フランツ・リストによる歌曲「アヴェ・マリアⅣ S.341」のピアノ独奏編曲です。ルディやハフの録音があります。
呼称は「アヴェ・マリアⅣ」か「ト長調のアヴェ・マリア」でしょうか(同じくⅣは「よん」でも「フォー」でも「フィア」でもご自由に)。

● S.558/12 アヴェ・マリア (シューベルト=リスト) 
ご存じのようにシューベルトの有名な歌曲「アヴェ・マリア (エレンの歌 第3番) D.839」をリストがピアノ独奏編曲したもの。編曲は第1稿(S.557d)と第2稿(S.558/12)のふたつのバージョンがあります。ベルマンによる感動的な名演があります。
呼称はそのまま「シューベルトのアヴェ・マリア」でいいでしょう。

関連記事: リストのややこしいこと2 -悲しみのゴンドラ編-  


記事一覧(サイトマップ)

ミッチ at 18:21│Comments(4)TrackBack(0) リストのこと 



トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by yoshimi   April 18, 2013 23:47
こんばんは。
リストの作曲・編曲した「アヴェ・マリア」というと、シューベルトのものが一番有名のようですが、同じタイトルで他にも何曲もあるので、ややこしくて混乱しますよね。
こういう風に整理してもらえると、こんがらがった頭の中がどうにかほどけました。

「アルカデルト」と「アヴェ・マリアⅡ」は知らなかったので、Youtubeで探して聴いてみました。
「アルカデルト」はリストのアヴェマリアのなかでも、とても明るくて可愛らしい曲ですね。

シューベルトの編曲版は、シューベルトらしく歌謡性があってメロディアスですが、それ以外の曲は静謐で瞑想的な雰囲気もあり、聴いていてしんみりするような曲が多いですね。どの曲も和声がとても綺麗です。
特に好きな「アヴェマリア」と言うと、「詩的で宗教的な調べ」と「ローマの鐘」になるでしょうか。

話は変わりますが、村上春樹の最新作で《巡礼の年》が登場しているそうですから、今年は《巡礼の年》ブーム(?)になるかもしれませんね。(私は未読なのでどのように使われているのか知らないのですが..)
2. Posted by ミッチ   April 19, 2013 20:08
こんばんは!
そのように言っていただけるとやりがいを感じます。ありがとうございます!

リストのアヴェ・マリアはおっしゃる通り瞑想的ですね。聖母マリアを賛美する曲ということで、どれも宗教的な神秘性があります。

僕もこの中で一番好きな曲は「詩的で宗教的な調べ」のもので、この曲はリスト全作品のなかでもかなり好きな部類に入ります。(ちなみに原曲の合唱曲も本当に美しいです)

村上春樹の「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は最近ニュースサイトで読んでびっくりしました(笑)。僕もまだ読んでませんが、今度ぜひ読んでみたいと思います。これにあわせてユニバーサルがベルマンの巡礼の年を国内版で再版するというのも、商売の嗅覚が鋭いなと思いました(皮肉ではなく、本当に褒め言葉です)。
3. Posted by klavier   April 20, 2013 17:21
こんにちは。
リストのアヴェ・マリアって、こんなに色々あるのですね!さすがミッチさん。私はリスト好きと言いながら、まだまだ知らない曲が多いです。。
「詩的で宗教的な調べ」のアヴェ・マリアは、私も大好きですが、合唱曲はまだ聴いた事がありません。
有名なシューベルトのアヴェ・マリアは、この題名の歌曲の中では特に好きな曲ですが、リストもきっと好きだったから編曲を作ったのでしょうか?

ところで今度、オラトリオ「キリスト」のピアノ独奏版のCDが出るのですね!?ピアノ版はまだ聴いた事が無いので、これは私もぜひ購入して聴いてみたいです。
この曲の話は、リストの伝記本にも出てきてましたよね。これをピアノでワーグナーが弾いたのを聴いても良さが分からなかったコジマが、父リストが弾いたら、別の曲のように(素晴らしく)思えた・・・というエピソードが印象に残っています。
ミッチさんのTwitter情報も、有難いです!
4. Posted by ミッチ   April 22, 2013 05:42
こんばんは!
これらの曲はほとんどがマイナーな曲なので、知らなくてもおかしくはないと思います。

詩的で宗教的な調べのアヴェ・マリアはぜひ合唱も聴いていただきたいです。
http://www.youtube.com/watch?v=yomvt_87nSI

リストはシューベルトを敬愛していましたから、シューベルトの多くの歌曲も好きだったと思います。同世代のシューマンも、シューベルトの作品の評論を書いたりしてたので、シューマンもシューベルトを尊敬していたと思います。実際シューマンはその歌曲「献呈」にてアヴェ・マリアの旋律を引用しています(終わる直前のピアノ伴奏部分)。そしてこのシューマンの歌曲はリストもピアノ独奏編曲していますので、この3者のからみが面白いですね。

「キリスト」のCDは楽しみですね!
昔はリストの曲といえば録音される曲はだいたい決まっていましたが、昨今は本当に様々な曲が録音されていると思います。これはピアニストや聴衆たちのリストへ対する意識が変わって来たからだと思います。

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
FERENC LISZTレスリー・ハワード: リスト ピアノ作品全集 Disc.90